「……翁、ジャック。年寄りの与太話はそこまでにしてはもらえないか」
――おっといけない。見つかってしまったようだね。
それはそうと、ソロ。
「あなたまでそう呼ぶのか……」
いいじゃないか。可愛いしね。
あっと、そうそうソロ。君だってこんな所で油を売っている暇はないんじゃないのかい?
子供達が、そろそろ来るよ。
――ああ、ほら。
「……」
深い溜め息を一つゆっくりと吐いて、黒猫はひょいと周りの喧騒を縫って玄関へと向かう。
――ああ、あぁ……スケルトンが自分がもう飲み食いできない体なのを忘れて、葡萄酒をラッパ飲みしている。
全部床にこぼれるだけなのだから、勘弁して欲しい。片付けるのは誰だと思ってるんだ。
今年も、子供達へ愛想を振り撒く役目を仰せつかったのは――強制的に――彼で、こればかりはものぐさな彼もさぼれず(他の者は全くアテにならない)、嘆息ばかりが出る。
彼の一年分の笑顔は、今日で――子供達への応対で――全て消費されると言っても過言ではないのではないだろうか。
――まあ、口で言うほど嫌いではないのだけれど。
「Trick or Treat!!」
今年もお菓子の詰まったバスケットを持って、黒髪金眼の青年が笑っていた。