ラチェット

 チェシャ猫がニタニタと笑いながら何かを言う。
 そう、どうせいつもの謎かけだ。
 
「時間は何で巻き戻らないんだと思う?」
 
 白兎は、だから仕方なく答えた。
 経験上、何か答えなければいつまでもいつまでも、同じことを繰り返し聞いてくることを彼は嫌と言うほど知っていた。
 ――どうせ、二人とも暇を持て余しているのだ。急ぐ用事は何もない。なら、この気紛れ猫に付き合うのも一興。
 だから、こう答えた。
 
「ラチェットは逆回転できないからだ」
 
 さて、この答案は彼のお気に召すかどうか。
 
「ラチェット――爪車、ねぇ。確かに、あの歯車は爪が邪魔して逆回転できねぇな」
 
 チェシャ猫は楽しそうに笑う。
 白兎も笑って言った。
 
「時計は歯車で動いてる。なら、時間も歯車で動いてたっていいと思わないか?」
 
 

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