ああ、やっと全部終わったんだって、その時やっと思えたんだ。
陽の当たるこの世界で
全てに決着がついて、地下世界を吹き荒ぶ嵐は去った。
公司のトップがいなくなり、最下層は復旧が今だ続き――始まりはたった半年と少し前だというのに、アンダーグラウンドは随分と様変わりしてしまった。まだまだ後始末は終わっていなかったが、留美奈と銀之助は別れを惜しみつつも地上へと帰って来た。
どこか胸に一抹の空しさを抱いたまま。
彼女達の姿は、結局あれから見つけることは叶わなかった。
「るーみーなー! 早くしないと遅刻しちゃうよー」
そして彼らにはまた日常が帰って来た。
「わぁーってるよ!」
前と同じ――には、戻れなかったけれど。留美奈の家には、彼女達のための部屋がまだ残っている。
「わかってるなら、もっと早く起きるとかしようよぉ。ただでさえ半年も学校休んでて、色々やばいんだからさ」
「だぁから! 毎日、この俺が! 必死こいて勉強してんだろ!」
東京の日々は忙しなく駆け足で過ぎ去って行く。一度日常に戻ってしまえば、立ち止まる隙なんてありはしない。寂しいとか、悲しいとか、言いたいことは数あれども、それらは日々の生活に紛れてしまって外へ出ることすらない。
――けれど、ぽっかりと空いた二人分の穴はまだ塞がっていない。
「――よっしゃ、行って来ます! オラ行くぞ銀之助!」
「あ、ちょっと待ってよ留美奈ぁ!」
だが、表面上だけは何事もなかったかのように過ごすのが日常になっていた。
「留美奈だって聞いてたよね!? 地下と地上とのアクセス経路を遮断するかもしれないって……」
そんな日々に突然、終止符を打つかのような銀之助の言葉。
放課後の屋上には彼ら以外誰もいなかった。
「このままでいいの!? このままルリさんにも、チェルシーさんにも会えないまま……」
――わかっていた。いつかは自分の中で決着をつけねばならないことを。
「よくねーよ! よくねーけど……でも……」
――二人が死んだなんて認めたくない。けど、あんな状況じゃ死んだとしか思えない。
「でも……ッてなんだよ、そんなの全然留美奈らしく……」
「ないわよ!」
強気な言葉と、相変わらず手が出てしまう彼女。
そして、見上げた先には空を仰いで満面の笑みを浮かべる少女。
――だから、その時は本当に驚いたんだ。
「ルミナさん、おはようございます」
「オハヨウ。早くしないとまた遅刻するわよ?」
以来、浅葱邸に住人が二人増えた。
「留美奈ぁー!! 早くー!」
以前とは違う形だが、やっと彼らに本当の意味での日常が戻って来る。
やっと今、全てに幕が降りた。
「おう! 今行く!」
見上げれば抜けんばかりの青空、太陽は燦々と輝き、心地よい風が吹き抜ける。人工の空はここにはない。夕焼けの来ない天もここにはない。鈍く輝く街並みは同じだけれど、何よりこの地には風が吹く。
留美奈の走り去った後に、小さく風が舞った。