―― それは、翔べないアオイトリの望む、もの。

Azure
 
 
 
さらさらと水が流れて行く音を聞きながら
今日も哀しみのウタを歌っていた
風は優しく声を掛けて行くけれど
涙は止まらなかった
いくつもの空をずっとずっと見上げて来た
今日も空は淀んでいて灰色で
とても翔べる気なんかしなかった
 
この背中の翼はもう羽ばたくことなどないのだろうか?
もう一度だっていい
またあの青色の
僕と同じ色をしたあの空へ舞い上がりたい
アオイトリはずっとここで待っている
青い空が覗くその日まで
ここで
ウタを紡ぎながら
 
しゃらしゃらと鈴が奏でる響きを聞きながら
今日は喜びのウタを歌ってみた
風が驚き小さく訊ねて来たけれど
微笑が零れただけだった
シアワセを乞われたことなんていつ振りだろう?
今日の空も濁っていたけれど
何故だか翔び立てる気がした
 
この高い天空はもう晴れ渡ることなどないのだろうか?
あと一度でもいい
ただ希望を湛えた
青く蒼く澄み渡ったあの空を仰ぎ見たい
アオイトリはずっとここで待っていた
シアワセを運べるこの日まで
独りで
ウタを紡ぎながら
 
勇気を振り絞って翼を広げた
希望のウタを歌いながら
まだ空は暗澹としていたけれど
雲の隙間から溢れる光と青い空が見えたから
 
この小さなシアワセを今度こそ僕は放さないよ
もう二度はない
最後かも知れない
あのキレイな青空を取り戻す足掛かりを
アオイトリは今ここを翔び立った
希望の空に逢えたこの日に
空へ
ウタを紡ぎながら

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